『見つけたいのは、光。』ネタバレ含む感想レビュー｜立場の違う女性たちが交じり合う物語

飛鳥井 千砂先生の小説『見つけたいのは、光。』を読んだ感想ブログです。

ワンオペで乳幼児の面倒を見ながら、仕事探し中の女性。

家庭では家事を一人で担い、職場では妊婦や育児中の若い子の分を請け負い続けてきた女性。

そしてシングルマザーとして自分の思いブログで綴る女性。

接点はネットだけだった女性達の人生が交じり出した先に見えたのは──？

こちらを読んだ感想についてまとめました。

『見つけたいのは、光。』作品概要

タイトル：見つけたいのは、光。
著者：飛鳥井 千砂
出版社 : 幻冬舎
発売日 : 2022/7/21

登場人物

●亜希
30代半ば、1歳4ヶ月の子供と夫がいる。
夫は飲食店で長時間労働かつ薄給のため、保活と就活を同時に進行中。
実家は遠方。

●茗子
30代後半、家族経営の会社に勤める夫あり。
フルタイムの管理職で子供はいない。

●Hikari
40歳、2人の子を持つシングルマザーで都内の大手不動産会社勤務。
子育てや働き方などについての持論を、ブログ『Hikari’s Room』で発信している。

あらすじ

亜希は保育園へ入るには仕事を見つける必要があり、仕事を決めるには預け先が必要というジレンマに追い詰められている。

茗子ぬるい働き方をしている夫は家事を一切手伝ってくれず、会社では妊娠した若い子や子育て中の社員の仕事を押し付けられ残業の日々。

立場の全く違う二人の共通点は、とあるシングルマザーの育児ブログを読むことだった。

一方は親しみと尊敬を持って。もう一方は憎しみの対象として。

そんなある日ブログ執筆者が失踪した。それをきっかけに二人の人生が交わり出す。

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『見つけたいのは、光。』の感想（ネタバレ含みます）

【注意】ここより以下はネタバレ含みます！

見方が変われば評価も変わる

シングルマザーの育児ブログを中心に、異なる立場の女性がつながっている物語です。

乳幼児をワンオペで育てている亜希は、このブログ主であるHikariさんに憧れと尊敬を持っており、自分が辛いときに何度も読み返して元気をもらっていました。

このブログは人気があり、亜希だけでなく、多くのファンを集めていたのです。

ブログもインスタもそうですが、注目を集めるアカウントは、ファンも増えますが一定数のアンチも発生するものですよね。

このブログにも執拗に批判を繰り返すアンチ読者がいました。

アンチになる人の背景

最終的にアンチコメントをしていた人物の背景を知ることになりますが、やはり攻撃的なコメントをする人はそこに至るまでの背景があるんですよね。

▼マンガですがこんな場合も▼
『しょせん他人事ですから ～とある弁護士の本音の仕事～ 』ネタバレ含む感想レビュー！主婦ブロガーが炎上した理由とは

愛が憎に変わることも

恐ろしいなと思ったのは、ブログのコメント欄の流れが変わった場面です。

このブログは良いコメントにも、嫌なコメントにも返信しないスタンスで運営されていました。

アンチコメントの主に対し「更新されなくなった原因」として、集団で責める流れになった場面があります。

そんな流れから一転、いつまで立っても動きが無いことに対し、読者は不満や苛立ちを感じ始めました。

自分達が一方的に送っているものに対し「自分達がこんなに愛を注いでいるのに返してくれないなんて酷い」と変わってしまうのかもしれません。

痛快だったモラハラ夫への謝罪

この作品の中で最も小気味よかったのは、茗子が夫に対して謝罪した場面です。

モラハラ夫に謝罪なんて、それのどこが痛快なの？と疑問に思いますよね。

茗子の夫は弁の立つタイプで、自分を正当化するのが得意です。

家業なのを良いことに朝はのんびり重役出勤をして、早々に家に帰るような生活を送っています。

早く帰っても食事の支度どころか、お風呂の準備すら妻の茗子が仕事から帰宅するのを待っているような男でした。

この夫から茗子に対し謝罪を求める場面が何度かあり、いずれも空いた口が塞がらない、といった内容でした。

謝罪をしろと責める夫に対し、茗子が行った謝罪したのですが・・・

完璧じゃない私たち

自分が我慢すればいいと受け入れながらも、ネチネチ負の感情を貯めてしまう人。

思い込みが強いため大胆な行動に出るわりには、後からクヨクヨしてしまう子供っぽい人。

カリスマ性があって人を惹きつけてしまうのに、周りに関心がなく放置してしまう人。

相手にとって分かり取りやすいアドバイスの仕方ができない、不器用な人。

何ごとも損得で考えて、利用できる人は利用してやろうという計算高い人。

主だった登場人物は3人ですが、この作品には本当に様々な女性が登場します。

完璧な人なんていないけれど、それぞれの人生で少しでも明るい方へ進んで行こうと思える小説でした。

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