尾添椿さんの
『生きるために毒親から逃げました。』の
感想ブログ記事です。
心理的虐待を受けてきた作者が
毒親と絶縁するまでの
体験を描いたコミックエッセイです。
最終回までを含めた
感想についてまとめました。
『生きるために毒親から逃げました。』作品概要
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タイトル:生きるために毒親から逃げました。
著者:尾添椿
出版社 : イースト・プレス
発売日 : 2021/2/17
登場人物
●椿
尾添家のひとり娘。
経済的な不自由さは無いものの
精神的に親から縛られて育ってきた。
●母親
作中ではロシア人風の美人。
友人いわく「うわっ!」と思うくらい
きれいな女性に見えるらしい。
友人は不要で、一人でも平気なタイプ。
●父親
一見、優しそうに見えるが
気分の上下が激しい所もある。
家柄に恵まれていたようで
お金には困っていない様子だった。
あらすじ
主人公の椿は小さい頃から
両親の言動に違和感を感じていました。
寝ている間に置いていかれるのでは?と
恐怖心で眠れなかった幼稚園時代。
自分がいじめられても
両親は助けてくれなかった小学生時代。
夜に眠れず病院へかかったものの
両親から責められて薬を捨てられました。
代わりに親から与えられたのは
なんとアルコール!
お酒で不眠を紛らわせ
香水でお酒のニオイを
ごまかしていた中学生時代。
呼吸が出来ないほどの
食物アレルギーを発症しても
笑いごとで済まされた高校生時代。
親の異常さに気が付いた彼女は
親元から逃げることを決意します。
現在の日本で可能な限り
縁を切るための過程と
具体的な方法について描かれた作品です。
【注意】ここより以下はネタバレ含みます!
『生きるために毒親から逃げました。』あらすじとネタバレ含む感想
第1章 幼児時代のあらすじ・感想
- 両親からは宝物と可愛がられていた
- 態度や言葉遣いに両親は厳しかった
- 幼稚園でも家でも辛い時間を過ごす
両親の口癖は「悪い子は置いていっちゃおう~♪」
椿さんが生まれた家は
生活にゆとりもあったようで
両親がギスギスしている様子はありませんでした。
むしろ夫婦仲が良いぐらいで
ニコニコしながら
幼い椿さんをからかう場面が多かったです。
小さい子供をお持ちの方であれば
グズって動かない子供に対して
「じゃあ、そこにいなさい!先に行っちゃうからね!」
などと言った経験が
あるんじゃないでしょうか。
大抵の子供は、その場で反省しても
すぐに忘れてケロッとしているものです。
おそらく何だかんだ怒られても
自分は愛されているという
自信があるからだと思います。
ところが、椿さんの場合は
「ワガママを言ったら置いていかれる」
「親が言う通りにしないと一人ぼっちにされる」
本気でそう思っていたようです。
両親からは「可愛い」「宝物」と
声がけもされていたにも関わらず
どうして愛されている自信が無かったのでしょうか?
父親の地雷スイッチか分からない恐怖
原因の一つとして
にこやかだった父親が
人が変わったように激高することが
日常的にあったからだと思います。
尾添家は家柄の良い家系だったようで
父親は「お行儀」に関して厳しい人でした。
「うん」という返事には「はいでしょう!」
「ちがーう」には「違いますだろう!!」
幼児相手とは思えないほど
結構な剣幕で怒鳴っていたようでした。
子どもにとってはどんなことを言うと
父親が豹変してしまうのか分からない
恐怖心があったのでしょう。
幼稚園に通う年頃の椿さんですが
食事中に話せない
場面緘黙になってしまったそうです。
大人になってもそうですが
何が怒りの地雷スイッチか分からない相手と
会話すること自体が恐怖ですよね。
ヘタな事を言って怒鳴られるぐらいなら
何も話さない方が良いと考えるのは当然だと思います。
母親にせがんで幼稚園に通ったものの
椿さんは5歳になって幼稚園に通い始めます。
これまで椿さんが接してきた相手は
この浮世離れした両親が中心です。
渋る母親にせがんで入園したものの
同年代の子供とうまく関係が作れず
幼稚園ではいじめにあっていたそうです。
幼稚園ではいじめられて
家では安心して会話をすることもできず
椿さんは感情をどんどん奥へと
しまい込むようになりました。
悲しかったら泣く。
痛かったら泣く。
そんな当たり前の感情も出せません。
同級生たちが小さなことで
涙を流している姿を見て
椿さんは羨ましかったそうです。
自分が泣いたら親に置いていかれて
ひとりぼっちにされるかもしれないのに。
どうして、みんなは泣いても
親に置いていかれないんだろう?と。
外では自分を出せなかったとしても
家では我がままを言ったり
甘えたりしたかったですよね。
幼い頃から自分が感じた感情を
出させてもらえなかったなんて
とても胸が痛む話です・・・
第2章 小学生時代のあらすじ・感想
- 話が通じない母親に対する違和感
- 病院へ連れて行ってもらえない
- 娘に対するいじめも他人事
娘が友達をつくるのを邪魔する母親
同年代の子との関わり方が分からず
友だちをどうやって作ればいいのか
椿さんが母親に相談する場面がありました。
「友達をつくりたい」
「仲良くなる方法を知りたい」
そういう相談内容でしたが
母親の返答はこうでした。
「気にしなければいいじゃない」
「お母さんは一人でへっちゃら」
方法について相談しているのに
自分の価値観を押し付けてくる母親。
全く会話が噛み合っていません。
別の場面でも母親は
友達がいないのではなく
いらないから作らないだけだと言います。
そういう主義であることは
個人の勝手だと思うのですが
友達を作りたいという娘の望みを
理解してあげる気は無いようです。
椿さんあての電話も自分が対応し
そんな子と遊んだらいけませんと言われます。
ドラマや漫画で見かけるセリフですが
実際に言う人いるんだとドン引きしてしまいました・・・
病院へ連れて行ってもらえない
ストレスが溜まった椿さんは
自分の髪の毛を抜くようになってしまいました。
頭頂部にハゲが出来ても
両親はそこに触れなかったそうです。
普通なら心配しますよね?
眉毛やまつげが無くなって初めて
母親が「眉毛描いてあげるから」と言いました。
え?そこ?
学校に相談するとか
病院へ連れていかないの?と
読んでいる私の頭には疑問だらけです。
せめて、何か嫌なことでもあるのか
本人に聞くぐらいはして欲しいですよね。
母親と会話が噛み合わないのは
今に始まったことではありませんが
私が一番、驚いたやり取りがあります。
椿さんが「のどが痛い・・・」と訴えると
母親はにこやかに答えました。
「なあにまた風邪?椿は病院大好きねえ~」
いやいや後半、おかしいでしょ。
全く話が通じないことはもちろん
基本、笑顔なのが母親の闇深さを感じます。
娘に対するいじめも他人事
同級生から椿さんは酷いいじめを受け始めます。
肉体的ないじめを訴えても
ケガの手当はしてくれるものの
父も母も特に動くことはしませんでした。
ところが、男子から
母親のことを悪く言われたときのこと。
それを知った母親は激怒し
相手の親を理詰めでネチネチ責め続けました。
娘がいじめられても無関心だったくせにと
ガッカリしてしまいますよね。
学校も親も、誰も自分の味方になってくれない。
椿さんがこの状況で
メンタルを保っていたことが
不思議なぐらいです。
第3章 中学生時代のあらすじ・感想
- お金は出すが子供に関心はない
- 不眠に悩む娘に親が勧めたものとは?
- 摂食障害となり体重が減少してしまう
お金は出すが悩みには向き合わない
発育が早かった椿さんを
好き勝手に噂する男子達に対し
我慢の限界となった椿さん。
頼れるのは自分だけと
学校側に訴えた場面は痛快でした。
よくやった!と父親は褒めてくれたけど
根本的な原因を尋ねることはありません。
椿さんが「学校に行きたくない」と言った時は
理由もきかず「行け!」と物を投げつけます。
なぜ行きたくないのか
何か悩みがあるのかといった
根本的なことに関心を示さないのです。
その一方、椿さんの趣味である
油絵用の絵の具を買い足しなさいと
父親は気前よく2万円を手渡しました。
お金は出すけれども
娘の内面には全く興味関心がない。
そのことが伝わるエピソードでした。
不眠に悩む娘に親が勧めたものとは?
最もこの両親の異常さを感じたのは
不眠で眠れない娘に対しての対応でした。
まったく意味が分かりませんよ・・・
椿さんが病院で薬を処方してもらったところ
誰かにバレたらどうするんだ!
恥ずかしい!と薬を捨てられてしまうのです。
確かに病院でもらう薬と違って
家の中だけで飲むなら外部からは分かりません。
この親たちは娘の健康よりも
世間からの評判が大事だということなんでしょうね。
摂食障害となり体重が減少してしまう
椿さんは摂食障害になってしまい
体重が減少してしまいました。
スクールカウンセラーを通して
母親に話をしてもらいますが
ここでも会話が噛み合わなかったようです。
カウンセラーさんって
会話のプロだと思うのですが
それに負けない母親が強すぎて、もう・・・
第4章 高校生時代のあらすじ・感想
- 高校では友達が出来た
- アレルギーを発症して呼吸困難に
- 両親は変わらず娘のことに無関心
- 本人の発達障害が判明する
高校では友達が出来て
楽しい学生生活となった椿さん。
ある日、友達とお菓子を食べている時に
食物アレルギーを発症してしまいます。
呼吸が苦しくなるほど
重度の反応だったそうですが
両親の反応は相変わらず薄かったです。
それどころか記憶すらしておらず
食材を気にせず使ってしまう始末・・・
これでは安心して食事も出来ません。
アレルギー反応を起こす娘に対し
「大げさだな~」
「食べられないなんて可哀そう」
と、笑っているぐらいです。
覚えていて、あえて入れていたのか
関心がなさ過ぎて忘れていただけなのか
正直、どちらかは分かりません。
でも呼吸困難になる位の食材なら
普通、親は避けますよね。
読み手としては
おかしいんじゃないか?と
ドン引きするレベルでした。
両親から今後についての話をされる
椿さんは両親から、ある提案をされ
それに対して反論しました。
それを聞いた母親が
椿さんに手を出してしまいます。
(一応、父は止めます)
その結果、救急搬送されて
椿さんは意識を取り戻しました。
目覚めた娘に母親がかけた言葉も
これまた「おかしいんじゃないか?」という
絶望的なものだったのです。
まずは謝罪でしょ、そこは。
全てにおいて、話が通じないというか
人としての価値観にズレがあるような印象です。
第5章 高校卒業後のあらすじ・感想
- 心理士さんの言葉に勇気をもらう
- 家を出て友人宅に避難
- 絶縁を決意、その後の手続きについて
大人になった椿さんは
徐々に世界が広がり始めます。
心理士さんの言葉をきっかけに
家を出る決意をします。
家を出てから両親と対面する
場面もありましたが
そこでも理解しようとする姿勢を
見ることは出来ませんでした。
ここから先は毒親から絶縁する
具体的な方法についてが
詳しく描かれていましたので
必要な方の参考になると思います。
最後に『生きるために毒親から逃げました。』の結末に安心しました
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毒親には様々なパターンがありますが
椿さんのご両親は最後まで
弱点を見せませんでした。
不自由なく暮らして来たであろう
父親と母親は良くも悪くも
自己肯定感が高かったように感じます。
自分より下だと感じる人間が言うことには
耳をかそうとはしませんでした。
どんなに外部の人間が言っても
反省することは無かったのです。
(医師の言うことも聞かない)
どんなに話しても伝わらないのであれば
距離を置く方が正解です。
椿さんの場合は距離だけでは足りず
絶縁という方法を取ることになりました。
父親との最後の会話で
呪いの様な言葉をかけられましたが
心がつながっていなければ
血のつながりなんて意味ないですよね。
椿さんの人生がこれから良いものでありますように!
他にもあります『毒親』マンガ作品情報
娘のマインドをコントロールする
優しく知性のある毒母の話▼
手を決してつながない祖母
目を合わせてくれない父親
母親がいない家庭で育った娘の話▼
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